正面
東側面
敷地ギリギリに建っている。
南(写真では左側)に国道1号が走っており、「乙川」が流れる。
軒下の壁に設けた四葉状の採光窓など、公会堂とは異なる意匠を用いる。
屋根は桟瓦葺で切妻のけらば部分は鉄板葺とし、公会堂と同様に目地漆喰を施していた。
※「けらば」とは、切妻屋根や片流れ屋根の外側から出っ張っている屋根部分の内側、
雨桶がついていない方の部分。
妻側(側面側)の三角形をした端部で、いわば妻側の軒先、端にあたる部分。
※ハンマービームとは英国のゴシック建築の典型的な装飾的木造屋根トラス
建物の内外で使われます。
当初は、公会堂及び陳列所の2棟が敷地の南北に相対し、
その他に公会堂の付属棟、陳列所の看守人及び便所の5棟が建てられていた。
また、正門に加え南北にも門があり、3方向に門が設置されていた。
(公会堂の付属棟、陳列所の便所、南北の門は失われている)
昭和36年(1961)愛知県岡崎勤労会館(現・せきれいホール)が敷地内北側に建設された。
※写真では道路を挟んで右側
建設時に陳列所は現在位置に曳家された。
この時に基礎から腰下までの部分が改造された。
また、おそらく同時期に、西側に新たな出入口が設けられた。
妻壁のガラス張りは、一部が板張りに変更されている。
旧額田郡公会堂及物産陳列所
(ぬかだくんこうかいどうおよびぶっさんちんれつじょ)
国指定重要文化財
大正2年(1913)竣工
設計:吉田栄蔵(公会堂)
施工:池野慶五郎ほか5名(岡崎の大工・石工)
構造及び形式等:木造、桟瓦葺
建築面積:
※公会堂=532.6㎡ 物産陳列所=175.8㎡
解説文:
旧額田郡公会堂は,当初額田郡の公会堂として大正2年に建設された。
旧額田郡物産陳列所は同年に旧公会堂と対面した位置に建てられ、
昭和36年に現地に移された。
現在、公会堂は岡崎市郷土館、物産陳列所は同収蔵庫棟として利用されている。
旧公会堂は吉田栄蔵の設計で、会堂棟、通用玄関棟、便所棟からなり、
中央に櫛形ペジメントを設けたルネサンス様式的建築構成になる。
旧物産陳列所は、妻面にハンマービームを用いたスティックスタイルを基調とした建築で、旧公会堂と対照的な意匠とする。
旧額田郡公会堂及び物産陳列所は、我が国における最初期の郡立の公会堂・物産陳列所建築であり、両者が一組で現存する数少ない例として貴重である。
また、地方都市における公共建築の近代化を示すとともに、
地方における西洋建築の様式的・技術的修得過程の達成度を示す建築遺構としても意義が認められる。
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公会堂と同じく、痛みが激しいです。
公会堂に接している正面側はまだ良いとしても、
側面や背面はペンキがボロボロ。
陳列所の裏には、すぐ国道1号が通っており、
その奥には矢作川から分岐した乙川が流れる。
排気ガスや川からの湿気など、建物の保存には向いていないように思えた。
耐震診断によって、公会堂ともども閉館になっている。
この建物群を再び甦らせるには、耐震工事、修復工事がかかる上、
移動させるとなったら、経費がそれ以上かかってしまうので、無理だとしても、
防腐剤、防カビ剤の入った塗料など、
現代の優れた材料を部分的に使うこともアリだと思う。
一刻も早く計画を進めたほうが建物にとって良いことは間違いない。
解説文及び資料は『旧額田郡公会堂及び物産陳列所保存活用計画』
平成30年 岡崎市教育委員会社会教育課編集・発行より
愛知県岡崎市朝日町3‐36‐1 2023年10月28日
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